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アート&デザイン

【展覧会レポート】「アペルト20 津野青嵐 共にあれない体」(金沢21世紀美術館)

ファッションデザイナーであり、看護師でもある津野青嵐さんの個展「アペルト20 津野青嵐 共にあれない体」が、2026年4月12日まで、金沢21世紀美術館のデザインギャラリーで開催されています。会場の様子を、写真と共にご紹介します。

(撮影:上田健真)

身体を無視し、身体から離脱する服

看護師の仕事や祖母の在宅介護を通して、体と衣服の関係性を見つめ続けてきた津野さん。本展のタイトルである「共にあれない」という言葉には、ファッションを通して他者をケアする視点と、幼少期から悩み続けてきたという自身の体に対する思いが込められています。

「Out of Body, In Dress」(2025)展示風景
「Wandering Spirits」(2018)展示風景

会場でまず目に留まるのは、天井から吊り下げられて空中に浮かぶ樹脂製のドレス。3Dペンで制作されており、首から掛けて着用するので、着る人の体形を選びません。「身体を無視し、身体から離脱する服を作った」と語る津野さん。「Wandering Spirits」は、2018年に欧州最大のファッションコンペ『ITS』のファイナリストに選出され、大きな注目を集めた津野さんの代表作です。

ベッドの上からまとい、家族と再び食卓を囲むドレス

「The Wishing Table」(2024)展示風景
「The Wishing Table」(2024)パネル展示

テーブルクロスのような「The Wishing Table」は、着飾ることが大好きだった津野さんの祖母が寝たきりになったことをきっかけに制作された作品です。ベッドの上に円卓を置いて作品を広げ、家族で食卓を囲む様子が、パネル展示されています。

「共にあれない」体を背負って歩く

「Walking With」(2025)の説明をする津野さん

「Walking With」(2025)パネル展示

新作「Walking With」は、津野さんが自身の分身に見立てて制作した衣を背負って歩くことで、幼少期から「できれば逃れたい」と感じ続けてきたという、自身のボディイメージと向き合うことを試みた作品です。

津野さんは撮影の際に、一人では前に進むことができない体を友人たちが自然と支えてくれたことから、「共にあれない」という思いを無理に克服するのではなく、周囲の人に支えられながら受け入れる感覚を得たそうです。

素材もテーマも異なる3つの作品が、自身の体と「共にある」ための新しいアプローチを、優しく示唆してくれる作品展。2026年4月12日まで開催されていますので、ぜひ、足を運んでみてはいかがでしょうか。

作家プロフィール


津野青嵐 Seiran Tsuno
1990年長野県出身、神奈川県在住。
アーティスト、ファッションデザイナー、看護師。
看護大学卒業後、精神科病院勤務と並行して山縣良和主宰のファッションスクールcoconogaccoで学ぶ。2018年欧州最大のファッションコンペ『ITS』のファイナリストに選出された3Dペンを使用したドレスのコレクションが注目される。2019年より北海道にある精神障害当事者等の地域活動拠点「浦河べてるの家」で看護師として勤務。現在は東京科学大学大学院修士課程に在籍し、「ファット」な身体との付き合い方を衣服の共同制作を通して研究中。芸術祭での作品展示や文芸誌などで執筆も行なっている。
▶ Instagram:@seirantsuno

インフォメーション


期間
2025年10月18日(土)~2026年4月12日(日)

会場
金沢21世紀美術館 デザインギャラリー

休場日
月曜日(ただし10月27日、11月3日、11月24日、1月12日、2月23日は開場)
10月28日、11月4日、11月25日、12月30日〜1月1日、1月13日、2月24日

WEB
https://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=65&d=1837

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