地方のクリエイターは20代で一人前になれない(たぶん)
都会のデザイナーと地方のデザイナーの違いは、労働時間の量です。働き方改革が叫ばれている現在でも、競争の激しい都会ではハードワークが当たり前。都会と地方のどっちが幸せなんだろう…
クリ絵(26歳)=グラフィックデザイナー歴4年目の向上心旺盛な女性。ようやく担当のクライアントを持ったが、デザイン業界の将来性に不安を持っている。
師匠(55歳)=地方都市でデザイン制作会社を経営するアートディレクター。約20名のクリエイターとともに多くのクライアントの様々な案件に取り組んでいる。
クリ絵:師匠、グラフィックデザイナーってどのくらいで一人前になれるんですか。
師匠:あぁ、その質問はよくされるね。
地方と都会では一人前になれる期間が違うんだが、ざっくりとお答えしましょう。
まず、地方の若いデザイナーの場合。
大都市と違って地方都市のデザイン会社には同業他社との競争がそれほどないんだな。だから、そこに勤めるクリエイターは結構ゆったりとしたペースで仕事をしてるし、週休2日制で、祝日も休んでいるだろ、1%ぐらいの例外を除いて。
そうすると年間休日が125日ぐらいになるから、2日働いて1日休んでいることになってしまう。
覚えることや経験しなければならないことが滅茶苦茶多いデザイン業界で、それじゃあ時間が足りない、実際の話…。だから、地方都市では若いクリエイターが20代のうちに一人前になるのは、ほぼ不可能だね、たぶん。
都会の若いデザイナーはハードワーク
クリ絵:それじゃあ、都会の若いデザイナーは…。
師匠:知り合いの20代後半の広告代理店勤務のクリエイターの場合なんだけど、彼の場合、午前10時過ぎから終電ギリギリまで毎日働き、土日も会議やイベントなどでつぶれるから、地方のクリエイターに比べて圧倒的に仕事をしている時間が多いし、休みも少ない。仕事内容の7〜8割が競合コンペって言ってるから、精神的にも鍛えられるしね。
別のイベント会社のデザイナーも同じようだし、テレビ制作会社はもっと過酷だと言っていたな。3人とも東京で働いているんだが、クリエイターにとってはこの状況が普通なんだろうね。
だから、大都会のクリエイターは30歳前にはディレクションをちゃんと経験できるし、競合コンペでプレゼンテーションを担当するし、濃密な時間を過ごすことになるわけさ。だから若いうちに、ちゃんと一人前と呼ばれる存在になれるわけ。仕事も当然速いしね。
クリ絵:都会と地方でデザイナー能力の格差が生まれるってことですか。
師匠:その通り。地方でも数%のデザイナーはちゃんと30歳前に一人前になってるけどね。忙しい会社に勤めているめちゃくちゃ優秀なクリエイターって、どんどん仕事を多くまわされるから。
クリ絵:数%かぁ…どんどん仕事かぁ…。しかし都会のデザイナーはみんなタフですね。
脱落しても都会で働いたデザイナーは有利
師匠:都会のデザイナーはみんなタフなわけじゃないんだ。
多くのクリエイターが若いうちに脱落していくみたいで、その人たちが故郷へUターンして働いたり、自分の好きな地方都市へ移住して働くケースも多いみたい。地方だといろんな仕事を短期間で経験できないんだけど、長い期間をかければそこそこ経験できるし、自分の時間もたっぷりと持てるしね。
自分の時間が欲しい人は地方都市でデザイナーをするのがいいのかな。何年か都会で経験を積んだ人は地方のデザイナーに比べて仕事が圧倒的に速いから重宝されるし。でも都会で頑張っているデザイナーみたいに裕福にはなれないけれど。
クリ絵:都会と地方で収入の格差もでてくるのか・・・。
師匠:しょうがないね。仕事をこなした量と収入って、ほぼ比例するからねぇ。
クリ絵が分かったこと
東京で経験を積んだクリエイターは、仕事が速いから地方都市では重宝される。(まず、東京で修行ね!)
地方都市で働くクリエイターは週休2日で自分の時間が持てるが、20代のうちに一人前になるのは無理。(たぶん)