ちょっと小話
ずいぶんと前のことになるのですが、九州出身の友人へ肴に良さそうな食べ物をいくつか贈って「自分の口には合わなかった」と言われたことがあります。それ以降、あまり変わり種の類は人に勧めなくなったのですが、思い返せばお互いまだまだ若かった。同じように時を重ねてお互い味覚も大人になったはずだから、試しにまた贈ってみよう。
本記事では、食べたことがない人には胸を張っておすすめしたい「ふぐの子糠漬け」をご紹介します。
初めて食べたときはちょっと緊張した記憶がある、石川県の “謎多き” 究極の珍味。けれど、今では冷蔵庫に常備してみようかな、なんて思うほどお気に入りに。薄切り1、2切れでご飯一膳がぺろりと食べられるし、言わずもがな、お酒のアテにぴったりです。
2年半を超える発酵と熟成を経て無毒化される、究極の珍味
猛毒を持つフグの卵巣を塩漬けとぬか漬けによって、2年半以上に渡り発酵熟成させることで無毒化する「ふぐの子糠漬け」。これぞ「珍味の王様」と呼ぶにふさわしい食べ物です。
さぞクセが強くて塩辛いのだろうと思いきや。ぬか漬けの香りを爽やかにまとって、塩味は強くも柔らかく、風味豊かで食べやすい。薄くスライスするだけでもそのまま肴に。塩味が強く感じるときはレモン汁やお酢、みりんをかけて、まろやかに。大根おろしをあわせれば、よりさっぱりいただけます。
調味料としても活用の幅は広く、一切れご飯に乗せてお茶やだしをかければ、上等なお茶漬けになります。ゆでたスパゲティにバターやオイルと一緒にあえ、大葉や刻みのりを散らすだけでも、コクの深い一皿が完成。
万能とも言える味が生まれる決め手は、自家製の「いしる」です。塩漬けにしたウルメイワシから出る水分を、何年もかけて熟成させて作る魚醤。この天然の調味料があってのぬか漬け、『油与商店』の味を作り出しているのです。
長期間の発酵と熟成によって毒が抜け、味わい深く仕上がる上に良質な乳酸菌やアミノ酸が増えて、健康効果も期待できる。フグの卵巣から毒が抜けるメカニズムはいまだに解明されていないため、日本で石川県にしか製造が許されていない「ふぐの子糠漬け」。石川県の珍味を語るには外せない逸品です。
ギュッと締まった粒粒に味が凝縮。たらこ料理のようにいろんなアレンジができる!
『ふぐの子糠漬け』
1袋840円(税込)内容量:120g
油与商店
金沢市金石上越前町4-15